VW(フォルクスワーゲン)のDSG故障のリスクと対策は?というテーマでお伝えしていきます。DSGの搭載車種については以下より解説しています。
DSGとは変速機の一つで、通称デュアルクラッチ・トランスミッションともいわれています。シフトレバーと運転方法だけ見れば普通のオートマと思う方も多いです。なので日本のユーザーさんではDSGが「構造はマニュアル車」ということを知らずに乗っている方もいます。
ですが実際の構造は以下の画像のようにクラッチ板が2つついたマニュアル車で、運転してみると普通のオートマにはない特性を感じることができます。
出典:What is a DSG automatic gearbox?/carwow
クラッチ板が1つの2ペダルマニュアル車については以下をご覧ください。
DSGのような2ペダルマニュアル車に対して、従来のマニュアル派はあまり好意的でない人もいます。でもDSGは運転してみればわかりますが超スポーティで、人力では難しいキレのある変速とフィーリングで、変速機界の芸術作品とも表現したくなるほどです。
さらに走行モードを変更すれば大人しかった性格が豹変して刺激的なドライブを楽しむことができます。なので個人的には普通のマニュアル車も好きなのですが、DSGのような2ペダルマニュアル車も歓迎です。
ですが物事には光と影があるという通り、フォルクスワーゲンのDSGはネットでも故障が絶えないという噂です。DSGが故障する理由は、基本的な設計やプログラムに問題があるからです。
2016年以降のDSG車ではアップデートでかなり改善されて故障事例も報告されなくなったという話もありますが、一度トラブルを起こすと分かってしまったクルマに乗るのは勇気が要るものですね。
2013年3月の世界的な大規模リコールによってDSGの問題が明るみになり、それをきっかけに以前からDSGには問題があったのではないか?との指摘も出てきました。
症状としては様々で、ジャダー(振動)が出るなどをはじめ、走行中に動力が切り離されたような感覚に陥り、そのまま惰性走行となりエンジンを再始動しようとしてもかからない、エンジン始動しても車が動かない、などの怖いトラブルになります。
DSGはいったんそのような致命的トラブルが発現し始めると、最悪の場合はメカトロニクス交換(変速機のコンピューターと油圧を制御するバルブボディのセットのことを言う)でディーラーなら60万~、DSG新品載せ替えで100万円、なんていう請求額をウソかほんとは分かりませんが目にした人もいると思います。
それらの修理を実費で払う羽目になる人はごく一部であるのと、中古車として購入して出てしまったパターンの人、新車保証が切れてから故障してしまった人等が考えられます。
フォルクスワーゲンのDSGはリコール対策済みでも故障するのか?
ご存知の方もいると思いますが、フォルクスワーゲンのDSGはこれまで何回かに分けてリコールが出てきています。傾向としては、リコール対策を受けた後しばらくは調子よくなるのですが、そのまま2万キロ、3万キロと走行距離が伸びてくると再び症状が発生し、結局はDSG本体を載せ替えするというパターンもあります。
リコールとは不具合を解消するためのものでしたが、フォルクスワーゲンのDSGはリコール対策後も再び症状が再発する事例が報告されています。
ただしそれらは2016年より以前の時期が多く、最近では一気に落ち着きを見せてきていると思います。しかも次期モデルではDSGを搭載することを諦めるとのうわさもあったにも関わらず、2017年5月発売の新型ゴルフではなんと再びDSGで挑んできています。
これはフォルクスワーゲンが「もう故障させるとは言わせない」「もう大丈夫ですから」というメッセージを送りたいのか、それとも全く失敗から教訓を学んでいないのかということだと思いますが、いずれにしても以前のDSGよりかなりフィーリングも改善されてアップグレードが進んでいることは間違いありません。新型ゴルフのDSGの出来栄えに関しては、これから普及が進み明らかになっていくと思います。
初期ロットという観点で言えば、例え国産車でも出る時は出ます。少し前の日産やホンダのCVT車なんて、いつ故障するか分からずミッションの載せ替え履歴がない限りは中古でも購入しない方がいいです。
私の父が3年前に乗っていたCVTのフィットも、たびたびアップデートをしていましたが9年間とうとう調子が悪いまま乗り換えとなりました。それによくそんなに故障が心配なら最初から日本車にしておけという人がいますが、私から言わせれば市場での実績がない新技術を我先にと新型車に追加して争う国産車の方が怖いという歴史があります。実績はお客さんがこれから作るということなので、要するにお客さんはモルモットになっているわけです。
初期のころのCVTやハイブリッドシステムなどの故障で40~50万クラスの請求で泣き寝入りしてきた多くのユーザーのことをどれだけの方が認知しているでしょうか?現にメルセデスベンツではAクラス、Bクラスでの失敗からCVTを「構造上致命的な欠陥がある」と言って認めていません。
確証はあるわけではありませんが、2016年以降の現在のフォルクスワーゲンのDSGであれば、正しいメンテナンス次第で乗れてしまうのでは?と私は考えています。
フォルクスワーゲンのDSGに乗るとしたどんな車を選ぶべきか?
フォルクスワーゲンのDSGの故障が怖いのであれば現行モデルの新車を買う、ということが言うまでもなく確実だと思います。それは保証が付帯するという観点と、2016年以降のモデルであれば比較的トラブルの発生事例が少ないという点からです。
私が見る限りはDSGのリコールもだいぶ落ち着いてきて、実際のトラブルも確実に減ってきているのではないか?という風にとらえています。
そうでなければ新型のゴルフにまた性懲りもなくDSGを導入しようとはならないはずですし、ユーザーにも納得してもらえるようなクオリティにまで仕上げてきているということだと思います。もしくは中古でDSG搭載車を購入するのであれば、
- リコール対策済みであることが確認できるか?
- 変速機もしくはメカトロニクスが載せ替えられた整備歴が確認できるか?
- 中古車でも販売店の保障体制は充実しているか?
という条件をクリアしている個体であれば意外と乗れてしまうかもしれません。それらの整備歴が残っていないDSG車を購入したい場合は、「リコール処置されていない車は購入時に対策してもらうことはできるのか?」という条件提示を中古車販売店に交渉してみるという手もあります。
売る気がある店なら真摯に応じてくれるかもしれません。とにかく前オーナーの整備履歴が何も分からない個体を選んでしまうというのは言うまでもなく自爆行為になります。もしくは走行距離が5万キロ以上の個体であれば、
- DSGオイル(作動油)とフィルター交換は定期的にされてきたか?
- DSGのキャリブレーション(ずれ調整)は定期的にされてきたか?
という点は確実にチェックしておきたいです。『セレスピード故障を防ぐ方法!アルファロメオとの付き合い方』でもお伝えしていますが、2ペダルマニュアル車はマニュアル車のメンテナンスの頭で考えなくてはいけません。運転方法は普通のオートマと変わらないのに、そこがややこしいのです。
それに加えて構造上、作動油(DSGオイル)にはメーカーが想定している以上の負荷がかかり、それが余計に変速機に負荷を与えていると思います。
なのでメーカーの指定時期など、言うことを100%あてにしない方がいいと思います。走行3万キロを超えた後でDSGオイルを交換した例を見ましたが、オイルの状態は汚れがかなりひどかったです。
なので引っ張っても3万キロ毎、遅くとも4万キロくらいには一回交換されていることが望ましいでしょう。同時にエレメントも交換されていなくては意味がありませんので注意してみてください。
キャリブレーションというのはマニュアル車でいうところの「クラッチワイヤー調整」に相当する作業ですが、これを定期的にやらないと2ペダルマニュアル車ではジャダーが発生してきます。
目安として1年1万キロ~2年2万キロ毎を推奨したいところですが、それらは運転者のクセによって結構大きく変動してきますので5万キロ、10万キロ走っても発生しないというパターンもあります。「最近振動が大きな」と感じてきたらキャリブレーションをやってもらって様子を見る、という感じで管理するといいかもしれません。
他社のDSG車は故障なく乗れるのか?
今のところ他社で致命的な欠陥のあるDSG搭載車というのは知りません。しいて言うならホンダのDSGはギクシャクして乗れたものではない、という実例は聞いたことがありますが、それも2年くらい前の話です。
私はアルファロメオ、フィアット、アバルトのイタリア車の販売に携わっていた時期がありましたが、アルファロメオのジュリエッタ、ミトのデュアルクラッチは非常にスムーズで優秀です。試乗したお客さんからも「ホンダより滑らかで好印象」という嬉しい言葉をもらうこともありました。
なのでフォルクスワーゲンのDSG車にこだわりがない限り(というよりゴルフやトゥーランなど特定の車種が欲しいのにDSGが心配で踏みとどまっていると思いますが)、アルファロメオという選択肢もアリだと思います。
まさかのフォルクスワーゲンからアルファロメオ!?という方向転換に抵抗がある方もいると思いますが、ミト、ジュリエッタであれば正直ゴルフなどの欧州Dセグメント車と維持費はほとんど変わらないですよね。
アルファロメオはくせのあるメーカーで好き好みが分かれますが、信頼性は2000年代に入ってから飛躍的に向上してきています。あとはメーカー独自のメンテナンスに関する考え方の違い、国産車と比較して高い安全基準を理解していくというハードルがありますが、これはクルマに詳しくなれるチャンスと前向きに考えてみるといいですね。