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ベンツW221は故障するのか?エアサス車に待ち受ける運命

ベンツW221は故障するのか?エアサス車に待ち受ける運命

ベンツW221は故障するのか?エアサス車に待ち受ける運命というテーマでお伝えしていきます。メルセデス・ベンツW221はいわゆるSクラスと呼ばれる車種です。今回お伝えするのは主に2005年~2013年まで生産された5代目についてですが、最新のSクラスとも共通する内容も多く参考になると思います。

メルセデスベンツのSクラスはキングオブセダンと呼ばれ、W221もその名にふさわしい圧倒的な存在感と先進性を与えられています。たびたびレクサスのLSと比較される車でもありますが、W221はデザインに嫌みがなく、街中ですれ違ってもそのプロポーションの素晴らしさに目を奪われてしまうほどです。

出典:2009 Mercedes-Benz S350/automobilesreview.com

そんなW221ですが、発売当初は1千万クラスの車種であるにも関わらず現在中古車価格は非常にこなれてきているため注目する人も多くなってきていると思います。Sクラスというラグジュアリーな響きはなかなか他の車では味わえないものですが、私個人から故障、もしくは維持し続けるという観点で言わせていただくと購入まではいけても実際に乗り続けられる人は限られてくると思います。

W221を始めベンツのSクラスは本国でもLセグメント、つまり「ラグジュアリー」とされ、大統領専用車として採用されるほどポテンシャルの高い車です。ラグジュアリーとはその辺の車でいうところの高級感というノリではなく、まさしくの高級です。当然メルセデス自身も名だたる企業の社長が乗ることを想定していますので、求められるパーツ、メンテナンス工賃も他のベンツよりさらに1割~2割増しは覚悟しなければなりません。

2割増しというと大したことないように感じてしまいますが、元々メルセデス・ベンツは他メーカーよりも「高級」に特化したブランドで、Aクラスからバリエーションがあるものの同じセグメント(車格)のBMW1シリーズ、アウディA1などと比較してもパーツ代が1割程度高いのです。そこにW221はさらに金額が乗る形となり、パーツ単体は大したことなくても数が重なればとてつもない金額になります。

そのようなことを想定するとサラリーマンで安易に中古が安いからと言って下手に手を出すべき車でないことが分かります。とはいえ、W221自体は故障してどうしようもない車というわけではなく本来は大統領、社長クラスが乗る前提で生み出されています。それほどのクオリティを持っていれば安易な故障はしないのでは?と思う人もいると思いますが、次項ではそう単純でない理由についてお伝えしていきます。

W221のエアサスは「故障」しているわけではない

W221ではエアサス故障問題が定番トラブルとして知られています。エアサスとは一言で表現すると「空気が充填されたサスペンション」のことで、一般的なサスペンションよりも高い快適性を実現する、高級車の代名詞たる装備です。しかしひとたびエアサスが故障すれば有無を言わさず車高が下がり、走行が困難となります。そこでディーラーで診てもらうと大抵の場合はフロントのエアサスからエアが漏れており、有無を言わさず新品交換です。ディーラーだと新品のパーツ代だけで一本20万、交換は左右同時が基本なので2本で40万、そこに工賃が加わると50万、さらに無理をして走り続けてエアサスのコンプレッサーが故障した場合はさらに上がります。

そうなるとW221はポンコツだな!パーツ代もバカにならん!と思う人が多いと思いますが、それはちょっと違います。メルセデスベンツからすれば定期的にリフレッシュしてもらいたい「消耗品」で、常に新車当時の走りを持続させるためのしかけです。エアサス交換時期ですが、車検時期などの年数が基準ではなく車は走った距離、つまり「走行距離」を見ます。なのでエアサスのトラブルは8万~10万キロ走行している個体に集中するということが分かるのです。

エンジンオイルだってよく5千キロに一回と言われるくらいですが、その目安に似ています。そしてこのことはエアサスに限った話ではなく、エンジンや足回りなどにも定期的に交換が必要な消耗品が複数組まれていて、その交換距離もだいたいきまっているということを表しています。故障したとよく言う箇所って、だいたいが消耗部品のことを指していたりします。つまり「必要なメンテナンスをサボったから、出た」という言い方がより正確ではないでしょうか。日本の多くのユーザーは「パーツは消耗品」という感覚が薄ければ、必要なメンテナンスの知識も満足にない。誰にも教わってこなかったし、誰も教えてくれる人がいないから仕方ありません。

だから何かあればすぐ「故障だ!!!」と騒ぐ…というのが実情だと思います。欧州車の場合、大元のエンジンや足回りを保護して車体そのものを長持ちさせたいという設計思想があり、国産車より厳しめのスケジュールで消耗品が組まれています。しかもオーナーに「早くメンテナンスしろ」と警告灯がジャンジャンなるので余計にびっくりして面食らうのです。そこまでやるのはオーナーの安全とエンジン保護の観点が大きいのです。

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ベンツのパーツ代だけが異様に高いのか?

パーツ代が異様に高い理由は、前項でも触れましたがメルセデスベンツが想定するお客様が「富裕層」だからです。しかしそれでもエアサス一本で20万という金額は本国価格に対しかなりぼったくっていると思います。ではなぜ日本に入ってきたパーツはディーラー通しだと急に高くなるか?「こんなにかかるなら、新車にしましょうよ」。これが日本のディーラーの車の売り方だからです。

そうでもしないと新車なんて売れないという実状を如実に表す営業スタイルですが、これは何もメルセデスベンツに限ったことではなくその辺に走っているトヨタや日産、BMWやフォルクスワーゲンでも似たような傾向があります。え?国産車はそうでもないだろと言いたくなるのも分かりますが、国産メーカーのパーツって基本的にディーラーやメーカーしか持ってませんよね。それはどういうことかというと、パーツの価格競争が起こらないのです。ということは、トヨタやホンダがそこにおいてあるオイルフィルターを「2000円です」と言えば2000円で売れてしまう世界という事になりますので、考えると恐ろしい世界です。

ですがこんなパーツの売り方をしているのは日本くらいで、メルセデスベンツの故郷であるヨーロッパでは車種によってはオイルフィルター1個500円、なんてこともあるくらいです。日本国内だけで生活していると気づくことができませんが、ヨーロッパではメーカー純正品の他に優良な社外品メーカーがたくさんあります。そのためパーツ単価も日本と比較してずっと安い。加えて古いクルマは「Hナンバー登録」という制度があり、税金面で優遇処置があります。パーツが安いからメンテナンスコストも安い。

さらに簡単なものならば自分でパーツを入手して交換までやってしまう人が多いため、日本でクルマを維持するうえで大きな費用となる作業工賃もタダです。そのための車種別マニュアルまで書店にならぶという世界です。安いから新車である必要がない。だから長く乗ろう…車のオーナーにとっては夢のような世界ですね。どうりで欧州では20年落ち、30年落ちの車がたくさん走っているわけです。

古いものでも手入れして長く使おう…欧州の自動車文化は非常に成熟していることが分かります。古いベンツで20年20万キロ乗れるとすればW221の持つ耐久性は比類なきものがある…ということが十分に分かりますので、日本しか知らない人たちの「ベンツは長持ちしないぞ」という寝言はあまり根拠がないことが分かります。

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W221の故障を防ぐためのメンテナンスとは?

ベンツW221の故障を未然に防ぎ維持していくために待ち受けるメンテナンスについて触れていきます。当記事の全半では車は本来、定期的な消耗品の塊である、しかもそれは年数というより走行距離で見る、というところまでお話しました。走行距離といってもあくまで目安で、乗り方やコンディションによって+-2万キロくらいは左右されます。それではW221には具体的にどんなメンテナンスが必要となりそうなのかを解説していきます。

走行4万キロごとに行うメンテナンス

  • ブレーキパッド+センサー(摩耗の具合に応じて)
  • フューエルフィルター
  • エアフィルター
  • イグニッションコイル+スパークプラグ
  • ブローバイホース
  • ATF+フィルター
  • バッテリー+サブバッテリー交換

 

走行7万キロごとに行うメンテナンス

  • カムシャフトセンサー
  • クランクシャフトセンサー
  • ウォーターポンプ
  • サーモスタット
  • エアフロメーター
  • フューエルポンプ
  • O2センサー
  • エアサスペンション4輪
  • スタビライザーリンク
  • アイドル制御バルブ

 

走行9万キロごとに行うメンテナンス

  • ブレーキディスク4輪
  • Vベルト+テンショナー
  • エンジンマウントブッシュ
  • カムシャフトカバーガスケット
  • スタビライザー等ブッシュ類一式交換
  • 5万キロ毎の消耗品交換

…といった具合にずらっと羅列しました。何やら見慣れない専門用語のようなリストですが、実はこれらのメンテナンスは国産車でもおなじみのものばかりです。なぜ同じかと言い切れるかというと、クルマを構成しているパーツなんて車である以上ほぼ一緒だからです。そこにエンジンの大きさだったり、形式だったり色んな要素が加わればまた変わってきますが、走れば似たようなパーツが似たような時期に摩耗して寿命を迎えるというからくりです。ではなぜそのような当たり前を知らないのか…

それは多くの人は車検やメンテナンスの明細に細かく目を通さず、それがどんな内容かを見ずに金額だけを見ているからです。そして金額を見て車を買い変えるか車検を通すか、という文化が出来上がっています。冷静に考えれば同じ車を大事に乗り続ける方が環境に優しく、ずっとお財布にやさしいのですが。新車を買えばその分日本経済には貢献できるかもしれませんが、新車時の満足感ってせいぜい1、2年くらいです。

ベンツW211はその気になれば30万キロくらいは走れるポテンシャルを持っていますし、時が経てば古い家具を使うような、あの愛着にも似た感情が湧いてくる車でもあります。おそらく、本当にお金を持っている人ってこのあたりの感覚に優れているというか、大事にモノを使うからお金がたまるのかな、と思ったりします。

上記のメンテナンスですが、当サイトの他のメーカーの記事でもお伝えしている通りディーラー丸投げだと途方もなくぼったくられます。W211を始めとするメルセデスベンツというブランドでは車体の各所に大小さまざまなコンピューターが組み込まれており、これが圧倒的なメルセデス・ワールドを生み出している元なのですが、ディーラーでないとメンテナンスできないと思いこんでいる人が多いです。ところがメンテナンスできるかどうかはその工場がDASという専用診断機を持っているのかという点が大きいです。

パーツに関しては何でもディーラーで任せず、純正部品の品番をまずは確認するようにします。そして楽天やAmazonでパーツ名で検索してみる。そこでヒットしたもので安いものを買い、ボッシュカーサービスなどの輸入車に強い工場で持ち込み交換してもらえばそれだけで大幅な節約になります。エアサスペンションは社外品を取り扱っているところもあり、こちらも大幅な節約が期待できます。そのような工夫がW211のみならず欧州車を維持していく上で重要なポイントとなります。

W211の故障の恐れがあるウィークポイント

どんなクルマでも弱点のひとつや二つはありますが、W221も例外ではありません。消耗品の範疇を超えてトラブルを引き起こしやすいウィークポイントについていくつかご紹介します。お伝えしたことが全ての個体で起こるわけではないですが、事前に知っておいた方が手の打ちようがあります。

W221・S600のエンジンオイル漏れ

W221の中でもV12エンジンを搭載するS600についてはとにかくエンジンのメンテナンスが大変で、気筒数だけで言ってもV12フェラーリと同じです。ひとたびエンジンからオイル漏れが始まればそれだけでもエンジンクレーンの出動を余儀なくされる事態となるので、少しでもメンテナンスコストを抑えたいならば大人しくS350を選んだ方がいいと思います。

W221・スピードセンサー故障

W221には車速を計測するスピードセンサーが4輪それぞれのタイヤハウス内に仕込まれていますが、このセンサー自体が誤作動を起こして、クルマが走っていないのに走っていると認識しスピードメーターやトリップメーターが狂ってしまいます。W221では定番のトラブルです。

W221・7Gトロニック不調

w221のオートマはとにかくATFが汚れやすく、無交換状態が続けば故障させる確率が高くなります。逆に4万キロくらいをめどに定期的にATFとフィルターの交換を行っていればそこまで恐れる必要はないと思います。W221の購入を検討するならば、迷わず後期型を勧めます。

キングオブセダン・W221に乗るということ

W221は強靭さと優雅さをまとった、メルセデスベンツの中でもまさに最高位と言える存在だと思います。私は街中でこのSクラスを見かけるとつい目で追ってしまうほどボディのプロポーションが素晴らしい車です。のびやかで大型のボディなのですが走っていても嫌みがないのです。特に後期型ではよりメルセデスらしいデザインが強調され、乗る人に特別な体験をもたらしてくれることと思います。

今買えるメルセデスでは、このW221世代のSクラスがよりメルセデスらしく、そしてお買い得感があると思います。私の生活レベルでは購入するまでが程遠い存在ではありますが、何かの縁でW221を購入する人がいればその圧倒的なポテンシャルでドライバーに感動を与えてくれることと思います。普通の車では物足りなくなったあなたへ、この日本で最上のメルセデスを選ぶという道があるということを忘れないでください。メルセデスW221について少しでもお役に立てる事を願っています。

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